檸檬-レモン-
「あっつー…」
このまま溶けてしまってもいい。
固まる時には、可愛く形成されるなら…
冷房を強にして、ベッドに横たわった。
外では蝉が大合唱している。
寝ても覚めても、頭に浮かぶのはあの柔らかな笑顔。
不思議だ。初めて会った時は、まさかこんなに想いが強くなるなんて思ってなかった。
素敵な人だって、思うくらいだった。
この気持ちを好きって言うんだっけ?
会いたいと、ただ思う。
篠崎さんの作った、レモンタルトが食べたい。
ベランダのプチトマトは、収穫したのかな。
きっと、プライベートでも色々な料理を作るんだろうな。
今、何してるんだろう。
大切な人は、いるのかな。
その人を悲しませたくないから、きっと私に連絡しないのかな。
そうだよね…
気持ちが深入りしないうちに諦めてしまおうか…。
そしたら、傷付くこともないのかも。
もう、待ってる自分なんていなくなるかも…
.