夫婦橋〜鈴RINと響いたその瞬間TOKIに
『ぐりーんべあ』を後にして
ふたりは海岸まで歩いた。
駅から海まで
徒歩で行かれる距離だ。
対岸には房総半島が見える。
ちょうどフェリーが
出港するところだった。
冬だというのに
潮風が頬に心地よく
蓮音の髪はなびいていた。
秀也の肩に
蓮音の鞄がかかっている。
先ほどと違って
手を繋ぐことなく
少し距離を置いて
砂浜を歩いた。
秀也のすぐ後ろを
時々姿勢のいい背中を見ては
俯きながら歩く蓮音の足跡が
秀也の足跡の
すぐ後ろに続いている。
風で髪がなびく度に
蓮音は
そっと指先で
髪を耳にかけていた。
自分の手が
あまり好きではなかった。
4歳から習い始めた
ピアノの影響なのか
小柄な割には手のひらが
大きく指が長かった。
祖父の茂宗は
「いい手だ。
蓮音ちゃんの手は
幸せをいっぱい掴める
手なんだよ。」と。
そんなことを思いながら
少し前に続く
砂浜の秀也の足跡を
眺めながら歩いていた。