声をくれた君に


学校に着いて教室に入ると

「おはよう、佐野」

「はよ」

そして

「櫻田さんも、おはよ」

「…! おはよう!」

あいさつされた。

(ほんの些細なことだけれど

これが私の第一歩だ)

席に座ると、小田さんも隣に座っていた。

私の存在に気づいたのか、彼女はふいっと私から顔を背けた。

(小田さんとも仲良くっていうのは、難しいよね。

まだ意地悪されるかもしれないんだし…

それでも、いつか、普通にしゃべれるようになるといいな)

そんなことを思っているとチャイムがなった。

「全員そろったかー

よし、号令かけろ」

黒板を見ると”櫻田”の文字。

(あ、私だ!

ふふっ、担任を驚かせるチャンス…)

「おーい、誰だ〜

って、櫻田かよ、じゃあ佐野」

「起立」

「…え?」

「気をつけ、礼っ!」

「「お願いしまーす」」

元気な声が響き渡った。

「…えーっ?!」

担任はこっちに歩いてくる。

「お前、今しゃべらなかったか?」

「はい、しゃべりました」

「え、お前、声出せんのか?」

「はい、出せます」

「おお…

お前、なんか綺麗な声してんな」

(予想外のお言葉?!)

「あ、ありがとうございます…」

こうして担任へのドッキリは成功し

想定外の賞賛までもらった。



< 115 / 209 >

この作品をシェア

pagetop