声をくれた君に
休み時間、黒板を消していると、見覚えのある光景に出会った。
視界に入るのは胴体だけ。
見上げることでやっと見える彼の顔。
「悠梓くん!」
「手伝ってやる」
「ふふっ、ありがとう」
「もう仕事増やすなよ」
「大丈夫だよ、もうちゃんとしゃべれるもん」
「そうだな」
あの頃が、ずいぶんと昔のように思える。
(最初は、気まぐれで、猫みたいな人だと思ってたけど
あの頃から、私を助けようと思って動いてくれてたんだよね)
ふたりであっという間に消し終わる黒板。
「明日、手伝えよ」
「はいはいっ」
「はいは一回」
「はーい」
「伸ばさない」
こんなやりとりができるようになったのも、声があるから。
「こんなやりとりも、声がないとできなかっただろ?」
「え…?」
「声出せるようになってよかったって思ってる?」
「…! うん!」
声が出せるようになっても
私の脳内はやっぱり悠梓くんに丸見えのようだ。