声をくれた君に


「笑うな、困る」

彼は短くそう言った。

(???)

「心臓に悪い」

彼はそう言うと、そのまま前を向いてしまった。

相変わらず言葉が少なく、どういう意味だったのかよくわからなかった。

でも、思わず両手で頬を押さえていた。

(ほっぺた熱いし、なんだかどう気がするし、意味わかんない)

私はそれ以上考えるのをやめて、無心で窓の外を見ることにした。


ホームルームが終わったあと、私はいつものようにヘッドホンつけ大音量で音楽を流していた。

ひとりの世界に入りたくて聞いていたはずの音楽。

それなのに

(恋愛系の歌選曲してる…

どういう心境なんだか)

私は自分の気持ちに気づきかけて、慌てて曲を変えた。

すぐさま流れ始める次の音楽。

しかし、イントロが流れ終わるころに、突然音楽は消えた。

(え…なんで…?)

そして私は見えた光景に目を見張った。

目の前に立つ小田さんと、片手に握られたはさみ。

彼女は私の耳からヘッドホンを外した。

「ごめんね、糸くずかと思って間違えて切っちゃった」

彼女は外したヘッドホンをそのまま床に落とした。

ポータブルプレイヤーにつながっているのは、途中から導線がむき出しになったコードだった。



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