声をくれた君に
小田さんはいつもはあまり見せないすごい形相で、私の耳元に口を寄せた。
「佐野くんと何話してたか知らないけど
あんたが笑ってるなんて気持ち悪い。
佐野くんはみんなに優しいだけだから、味方だなんて勘違いしないで」
そう言うだけ言って、佐野くんの方へと向かった。
「ねえ佐野くん、あめいる?」
「いらない」
「じゃあチョコは?」
「いい」
そんな会話をしているうちに他の女子たちも集まってくる。
佐野くんがみんなに優しいことなんて知ってる。
味方だなんて思ってない。
(それなのにどうしてこんなこと…)
私は床に転がったままのヘッドホンを見た。
そして気づいた。
(そうじゃない、これが普通だったんだ。
今までの当たり前だったんだ)
少し佐野くんと関わっていただけで忘れそうになっていた。
(この世界はそんな簡単に変わったりしない。
私がいつだって勝手に変わることを期待してしまっているだけ)
それでも
(神様は意地悪だ。
私を喜ばせたと思ったら、すぐに現実を見せてくる)
私は唇を噛みしめた。
(それなら最初から私を喜ばせたりなんてしないで…)