音色
『たまには顔見せろ』とか勝手なことばかり言っているが、本人が海外逃亡をしていたのだから、こちらとしてはどうしようもないではないか。

 そんなことをむっとした表情を隠すことなく思い浮かべてはみるものの、これは光の挨拶だということは利香も承知している。
 従兄は従兄なりに利香のことで心を痛めていて、気遣ってくれているのだ。

「それにしても、さ」
 送られてきたチケットが1枚ぽっきりって、これ、どういうこと?

 6年前のライヴは、3枚送られてきたチケットで家族全員仲良く楽しめたのに、今回は1枚きり。
 利香の言わんとしていることがわかったのか、母がそれを受けて続ける。

「プラチナチケットよ? ライヴハウスなんだから、数だって限られてるんだし、光くんの持分からあんたの分捻り出してくれただけでもありがたいと思いなさい」
 容赦ない言いっぷり。自分もその血を受けているのがまるわかりの声。

 同じ口調で話すということを利香自身が自覚しているから、そう言われると気分のいいものではない。

 自分が自分を説教してるみたい。
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