雨の残照【短編】
「これ……」

「人工エメラルドです」

 博士が唯一、成功だといえるものだと言っていました。

「人工の?」

 確かエメラルドはイミテーションでも造れないと聞いたことがあるのに……。

 覗き込むと、中には何か入っているのかキラキラと輝いていた。

「人工的にインクルージョンを封入しています」

 それって、宝石に取り囲まれた内包物のことをそう呼んだような気がする。

 宝石にとっては無い方がいいものを、わざわざ入れたんだ。

 エメラルドはそれが特徴とも言えるらしいけれど。

「それは世界にただ一つのものです」

 同じものは二度と造れないと言っていました。

「それじゃあ、とても貴重なものね」

 エメラルドは幸福や幸運ていう意味があったっけ。
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