。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅴ・*・。。*・。
キョウスケがちょっとだけ顔を戻して、目をゆっくり開く。
あたしはそんなキョウスケとまっすぐ対峙して、しっかりキョウスケの黒い瞳を見つめて言葉を続けた。
「恨んで、
恨んで、
恨んで―――
憎み切ったから」
だからキョウスケ……
あたしのこと、恨んで、恨んで、恨んで―――憎み切ればいいよ。
お前に嫌われるのはやっぱすごく辛いし悲しいけど、でもそうすることでしかお前が前に進めないのなら―――…
―――キョウスケが一歩前に進み出た。
裸足の足音がペタリ、ペタリと音を立ててゆっくりと近づく。
あたしの顏に影が落ちるほど、キョウスケの使ってるシトラス系の歯磨き粉の香りを感じるほど、いつの間にかキョウスケはすぐ近くに居て―――
ふいにキョウスケがそっとあたしの両耳辺りを手のひらで包み込み
何かを呟いた。
「 」
両耳を塞がれていて何を言ったのか………。
キョウスケは短く何かを呟き、やがてそっと耳から手を離した。
「失礼しました。雷が鳴ったので―――」
キョウスケは柔らかく微笑み、あたしの両肩をそっと回れ右させ
「引き止めてすみませんでした。早くマサさんのお部屋に行ってください」
と、一言。
雷なんて
嘘。
そしてあたしが聞こえなかったってのも
嘘。
『お嬢を恨むなんて
たとえ死んでも、それだけは―――
できませんよ』
キョウスケが呟いた言葉。
雷よりもずっとずっと胸や頭に響く。