。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅴ・*・。。*・。
響輔に握られた手首が痛い。
「響輔……痛い、離して…」
と泣きそうになりながらも、何とか涙を堪えて言う。
だって響輔、見たこともない怖い顔してる。
「離さへん」
いつか聞いた台詞。
あれは―――玄蛇と一瞬でもそうなりかけた時、訪ねてきた響輔が言った言葉。
「あんたは
スネークにそう言われて、揺らいどる。
言うたやろ!あいつは危険な男やて!」
「そんなこと!」
知ってるし、あいつに揺らいでなんかない、って言うことは簡単だ。だってあたしが好きなのは響輔だもの。
かっこ仮の関係でもこの関係が嬉しくて嬉しくて、恋をすると毎日がこんなにキラキラ輝くものだとはじめて知ったんだもの。
でも―――
実際、あたしは『そんなことない』と言えないでいる。
言葉にしたらとても簡単なのに。
どうして―――
「何でそんなこと言うのよ!あたしは響輔が好きなのよ!」
と、売り言葉に買い言葉。
「ほんなら俺だけ見ればええやん!
俺はここや!
あんたの目の前におる!!」
「分かってるわよ!」
響輔の怒鳴り声を聞いて、堪えていた何かがこと切れた、と思った。
まるでピアノ線のように強いのに、それは繊細で弱い。
響輔は目の前にいる。
だけどあたしを通り越して違う女のことを想ってる。
「でも、あんたが見てるのはあたしじゃない!
あたしと一緒に居るのだって、あんたの好きな朔羅を守るため、じゃないの!」
響輔の―――、一番痛いところを突いた、と言う自覚は……言ってしまった後、数秒遅れでやってきた。
響輔はあたしの腕を握ったまま項垂れて前髪をぐしゃりと掻き分ける。
「その名は出さんといて、言うたやん」
「響輔……ごめ……言い過ぎた……」と、切れ切れの声で何とか言うものの、その声が響輔に届いているのかどうかは分からない。
響輔はあたしの手を握ったまま、やや乱暴とも呼べる動作であたしを立たせ、大股で歩き出す。
どこへ行くつもりだろう、と思っているとすぐ目の前に鴇田が使ってる
寝室に目がいって
ドキリと心臓が鳴った。