。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅴ・*・。。*・。
響輔を完全に怒らせた、と思った。
いえ、今までだってこいつとはつまらないことで口喧嘩した。
けれど本気で怒っては無さそうだった。けれど今―――
こいつは計り知れない怒りを全身で露わにしている。
“殺気”なんてことよくわかんないけど、もしそれが理解できていたのだったら
間違いなく殺気を放っている。
響輔はこげ茶の、鴇田の寝室の扉を蹴破る勢いで脚で扉を開け、照明を落とした中リビングから漏れる灯だけを頼りにぼんやりとダブルサイズのベッドを浮かび上がらせているのを目にしてあたしは声を詰まらせた。
響輔……?
響輔が何を考えているのか分からず戸惑っていると、やや乱暴な仕草であたしは背中からベッドに沈められた。
「キャっ!」と声をあげながら背中がシーツ上に沈む。
その上に響輔が乗りかかってきた。
あたしが抵抗できないよう、素早い動作であたしの両腕を響輔の大きな手で拘束する。
初めてだった。響輔からこんなに乱暴されることが。
何―――………する気……?
とは言えなかった。初めて見せるそれは凶暴で凶悪な、暗闇の中で一筋の光を湛える
鷹
の目。
ごくり、と生唾を呑み込んで響輔を見上げると
「………たる」
響輔の声は低く、ひどく聞こえ辛いものだった。
「………え?」
と、問い返すと
「あんたが揺らいどる言うんなら、あんたを……一結を俺でいっぱいにしたる!
俺しか見ぃひんように!俺しか欲しくならんように!
一結が望むんなら
『愛してる』って
なんぼでも言うたるわ!!
なんぼでも
―――なんぼでも!」
響輔はその言葉を繰り返し、あたしの唇に強引に口づけをした。
「契約違反を起こしたんはそっちが先やで。これはスネークへの言葉や。
そんで俺に
『契約違反、理性、倫理―――もう、どうでもええ。
どうでもええんや。
二度目の過ち?そんなん関係あらへん!
いつまでも言い訳して一結の本心から逃げよった俺の責任でもあるんやさかい、そのカタもきっちり自分でつけたる!
あんたがあの男んこと考えれんように、
俺だけのものにしたるわ』」
響輔――――……
「愛してるで、一結」
響輔の二度目の口づけの間際、今までの怒鳴り声から一転、それは囁くようなもので、優しさ以外の何も感情が読み取れなかった。
「ほんま
愛しとる
だから、
俺の女になりぃ」
響輔――――
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