。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅴ・*・。。*・。




バカなあたし。


後悔したって遅いのに……


「キス


なんてしなきゃ良かった。




はじめて、だったのに……


凄く苦い想い出になっちゃったよ」



線香花火の火種がポトンと落ち、それと同時にあたしの目からまた涙がこぼれた。


先輩に言うつもりはなかった。


けれど何故か口についた。


「……へぇ……そうなん…」


やっぱ後悔……言うんじゃなかった。


先輩困ってるじゃん。


また目を擦ろうとすると、その手をやんわり先輩が退けた。


「目、こすると赤くなるぜ」


先輩はタバコを口に咥えると、もう一本の線香花火の先に火を灯した。





「俺は好きだけどな―――




線香花火の方が」






え―――……?


ほんのちょっと花火の煙と先輩のタバコの煙で白いモヤがかった景色の中、先輩がヤンキー座りをしながら笑ってる。


てか、ホント……ヤンキー


「ありがとうございます」


と、何か……言われてる台詞と行動が伴ってなくて思わず笑うと






「好きだけど?」






先輩はもう一度言いあたしの手を掴み、先輩の顔が近づいてきた。


でもあたしは避けなかった。


「それって線香花火が…ってことですか?」


はじめて気づいた。先輩って意外に睫が長い。


「うん……どっちだろうな~……」


その睫の先があたしの額をかすめていき、先輩の大きな手があたしの頬を包んだ。


あたしはゆっくり目を閉じた。


次の瞬間、先輩の唇とあたしの唇が―――


重なった。



優しい




キスだった。



そして、二度目のキスは




涙の味がした。





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