。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅴ・*・。。*・。



それはちょっとやそっと前の話じゃなくて―――うんと昔……


あたしたちがまだちっちゃい頃の……そうだ…まだ小学生ごろのとき


‟あのとき”もあたしは千里の手を引いて走っていた。


同じように蒸し暑い夏だった。



緑の木々がさわさわと葉を揺らし、その音がやけに大きくざわめいて聞こえた。


遠くで……夕立の空―――雷雲がもくもくしていて、ゴロゴロと音を立てている。


そんな中千里の声は響いていた。


道路に映った二つの小さな影が立ち止まり―――




『まってよ、さくらちゃん!』




ふと記憶が鮮明によみがえり、あたしの目の前に記憶が横切る。


小さな女の子と男の子―――


確かめるまでもなくそれはあたしと千里で……


あの頃あたしたちはまだ小学校入りたてで……


その年の夏―――千里のおっちゃんとおばちゃんはそれはそれは派手に夫婦喧嘩した。


一か月ほどその冷戦状態は続き、家庭は崩壊寸前、いっときは離婚までなりそうだったとき、あたしは小さな(自分が言うなよ)千里を連れ出し


やみくもに走った。





何で忘れてたんだろう―――


こんな大事なこと……



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