godlh
「秀郎っ。」
惟の言葉は聞こえなかった。僕は理科室に向かって、全力で走り出した。扉を思い切り開けようとした。が、開かない。何度、力を込めてもビクともしない。
「惟っ。」
惟も一緒に扉を開けようとした。でも、ふたりの力でも開く気配はなかった。
「なんで、開かないんだよ。」
僕は、理科室の扉を力一杯蹴飛ばした。
すごい音がした。けれども、扉は壊れることなく、僕らの行く手を阻み続けた。
「落ち着け。秀郎。」
「これが、落ち着いていられるかよ。」
「気持ちはわかる。でも、これは落ち着いて対処しないとダメだ。」
その表情は、何か気がついた様子だった。
「どういう事?」
「たぶん、あいつは俺たちの言葉で言うところの結界ってやつを創ってるはずだ。どうも、人間の世界に来た死神は、人間と大差ない力しか出せないらしい。でも、そんな力じゃ自分の世界に戻れない。だから、そう言う力が必要な時は、こうやって力を溜めるんだ。」
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