godlh

「痛ぇな。」
　あいつは、角を曲がったすぐの所で、靴ひもを結んでいた。僕はそれに気がつく事が出来なかった。てっきりあいつは尾行に気がつき逃げ出した、そう思ってまさか足下にいるなんて考えもしなかった。
　そして、僕はあいつに激しくつまづいた。
　僕の目の前には、あいつがものすごい形相で立っている。そんなあいつを前にして、僕は転んだまま立ち上がる事が出来なかった。
　「あ、ごめんなさい。」
　「ご、ごめんなさい。」
　「た、助けて。」
　どんな言葉も、あいつに届く事はなかった。
　あいつは、何かに気がついた。顔が、あいつの顔が近づいてくる。
　「あ、う、ごめんなさい。」
　僕はあいつの顔を直視する事が出来なかった。そんな俯いた僕のあごを思い切り掴み、首が折れるんじゃないかと言うくらいにすごい力で天を仰がせた。
　「お前、あゆみの中にいる奴だな。」
　“あゆみ”と言う言葉に、僕は反応した。
―――愛内さんの事を言っているのか？
「やっぱりそうだ。お前は、あゆみの中にいる奴だ。」
―――何言ってるんだ？あゆみの中って、いったい・・・。