godlh
あいつの言葉は、理解不能だった。ただ、僕にとって、とてつもなくマズい事を言っているのは、間違いなかった。
―――に、逃げなきゃ。
アニメなんかだと、“腰が抜ける”ってよくやってるけど、まさか自分がそうなるなんて思いもしなかった。立とうと思っても、足が自分の足じゃないみたいに力が入らない。
―――逃げなきゃ。
そう思えば思うほど、逆に力はどんどん抜けていった。
「お前がいるから、気持ちによどみがあるんだな。」
あいつは、何かを確信したようだった。そして、周りを見回した。誰もいない。
それがわかると、まるで、血で染まったようなどす黒い口を大きく開けて笑った。
「お前も死ね。」
さっきとは比べ物にならない強い力で、僕の首を掴んだ。
「く。」
苦しいって言おうとした。けれど、あまりの力の強さに、それ以上言葉を続ける事が出来なかった。
―――い、痛・・・。
心の中で呟く事さえ、許されないくらいの痛みが、突然やってきた。なんだかわからないけれど、首が切り裂かれるように感じた。
気がつくと、足元には何滴かの血が垂れていた。
―――僕の?
血を見た途端、僕は諦めにも似た気持ちになった。
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