godlh
―――所詮、人間が叶う相手じゃなかったんだ。その名前が示す通り、僕は命を刈られるんだ。あの大きな・・・。
僕には、あいつの正体がはっきり見えた。
「ひぃでぇろぉぉ。」
聞き慣れた声だ。でも、朦朧としている意識の中では、それが誰の声かわからなかった。
―――だ、れ・・・?
眼を開こうとしたけど、そんな事は出来そうにない。今の僕は、ただの人形と同じだ。自分の意志で、何か出来るような状態じゃなかった。
気がつくと、僕は地面に倒れた。同時に、頭に、体に、酸素がどんどん行き渡り、少しだけど意識がはっきりしだした。
「大丈夫か?秀郎。」
聞き慣れた声は惟だった。
「惟。なんで?」
惟がここにいる事が、不思議でしょうがなかった。
「そんな事はあとだ。立てるか?秀郎。とにかく逃げるんだ。」
惟に抱えられて起こされると、足元にあいつが倒れていた。
背中に、足跡がはっきり残っていた。
―――惟が蹴ったんだ。
ただ、そんな事をゆっくり思っている時間はなかった。
あいつも、立ち上がろうとし始めたからだ。それを見て惟は、ありったけの声で叫んだ。
「秀郎。逃げろ。」
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