天の川に浮かぶ島
羽衣島
 一面の夜空に、余すところ無く星が輝いている。

 その星のひとつから天女が羽衣を落とし、それが海に落ちて島になった。

 この何もない海上に浮かぶ小さな島にはそんな言い伝えがある。

 この島の名は五色島、別名、羽衣島という。

 人の気配のほとんどない島には、たった一つ、施設のような小さな建物があった。

 夜だというのに小さな明かり一つで、施設の二階の開け放たれた窓がある部屋で、男が一人、机の前に座り、静かに酒を飲んでいる。

 男は、黙ったまま遠くから聞こえてくる波の音に耳を傾けていた。

『あれが北斗七星だよ』

 その波の音が、男の脳裏に、遠い昔に聞いた声を浮かばせた。

 男は杯をおいて、机の上に立てかけていた写真たてを手にとった。

 写真たてには、古ぼけて霞んだ一枚の写真が入っていた。

 背の差でそれが男女だと分かるが、色あせた写真からは表情まで見て取ることはできなかった。

『それって北極星のことじゃないか?そもそも七個ないし』

 男の記憶が正しければ、確かにその写真の中の男女は笑っていた。

 何気ない言葉を交わしながら無数の星屑を眺めた。もう忘れてしまうほど前の話だ。

 だが、消して男は忘れなかった。

『なぁ、詩織。あした、七夕の夜に―――』
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