ヒマワリ君の甘い嘘


きっとこのまま高崎との待ち合わせ場所に行ってしまったら、

あたしはこの前のように泣いてしまう。



高崎の優しい声と
手と
笑顔を利用して。



高崎の気持ちを知ってて

そんなことをしてしまえば、

一番彼を傷つけることになる。




そんなの嫌だ。



一人で苦しんだほうがまし。



さっき閉めたばっかりの家のドアを

同じ鍵でもう一度開ける。



閉めた時とは対象に、静かに開いたそれはあたしが家に入った後、背中の後ろで小さな音を立てて閉じた。



泣くな。



泣くな。



ここで泣いてしまったら
あたしの負けだ、そんな気がする。



『どした?』



送られてきたその文字に、『体調悪くて』と返したあたしは、そのまま玄関に座り込んだ。




あんなの嘘じゃないか。



もう忘れた、なんて。



本当は喜んでたくせに。


少しだけでも、嬉しいと思ったくせに。



ぐちゃぐちゃだ、なにもかも。




あたしの嘘つき。




そう思うと、やっぱり堪えるなんてできなくて

行き場を失った感情は、涙に変わる。



子供のような言い方でしか、

言えなかった自分が嫌い。



もっとちゃんと

伝えることができたなら

こんなに苦労はしないのに。




「っつう…ッ」






あぁ、




あたし





ずっとずっと、






泣いてばかりいる。











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