ヒマワリ君の甘い嘘



***








ーピンポーン





「……………ん、」




頭がクラクラする。




チャイムの音に目を覚ましたあたしは、ソファーに委ねていた身体をゆっくりと起こした。



いつの間にか、寝てしまっていたらしい。

時計を見ると、短い針が12を指していた。



あたしは、誰かが家を訪ねて居る、なんて
気にも止めずに洗面所に向かう。




鏡に写ったあたしの姿は酷くて、こんな姿誰にも見られちゃいけないなって、自嘲的な笑みを零すと、冷たい水で顔を洗った。



首筋を伝う水滴をタオルで拭き取って、ボサボサになった髪の毛を一つに縛る。




ーピンポーン





申し訳ないけど、
今は出てあげられないんだ。



訪ねて来た人に、心の中でそう謝ると
あたしは重い足取りで二階に向かった。




「(とりあえず、着替えなきゃ…)」




身につけて居るものは、出かける前のあたしと同じ。


こんな窮屈なもの、早く脱ぎ捨ててしまいたい。




あたしは動きやすい、楽な服装に着替えると、脱ぎ捨てた自分の服を丁寧に畳んだ。




急に、机に置いてあったケータイが鳴り響く。




あたしはその音にビクリと身体を震わせ、
今度は誰からかかってきたのか、ちゃんと確認してからケータイを耳に当てた。




『あ、もしもし?』




裕也かと思って、
一瞬だけ胸が恐怖でいっぱいになった。



「高崎……」




『おう。…今お前んちの前に居るんだけど……、今何処に居んの?』




聞こえてくる彼の声は優しい。





『さっきからチャイム押してんのに、誰もでなくてさ。…体調悪いって言うから栄養ドリンクとか買って来たんだけど…』




さっきのチャイムは高崎だったのか。




家に、来るなんて…



「ばか 」



『え?なんか言った?』



「ううん。…待って、今鍵開ける』




玄関についたあたしは、スーパーの袋を手に持った高崎を、家の中に迎え入れた。



「よ。体調大丈夫か?」



「うん、へーき。ありがと」



「そっか、良かった」




そう言った彼はニコリと笑う。





その笑顔に、胸が苦しくなった。




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