ヒマワリ君の甘い嘘
返事は返ってこない。





その代わりに、だんだん苦しくなる彼の腕の中。




どうしたのかな……




「……だいじょうぶ?」





「ん……」






素っ気なく返されたその返事に、なおさら心配になる。




「お母さんと、何かあった…?」




「・・・・」




……やっぱり___




「…行ってよかった」



日向くんの声が震えてる。





「ありがとう」




「へ……、?」







……これは上手くいったってこと?




〜〜〜〜〜ッッ




良かった……





身体の力が抜けていく。



「本当、サンキューな…」




ぎゅうっと抱きしめる力が強くしたのとともに、日向くんは言った。




「うん……」




ここまでお礼を言われちゃ、嬉しいな…



さっきまで言って良かったのかな、なんて言ってたくせに。




「はー…落ち着く」






ポソリとつぶやかれたその言葉を、私は聞き逃さなかった。



私の肩に頭を埋めてる日向くん。



こんなにも弱ってる(?)日向くん見るの初めてだな……




「…………あの、そろそろ」




いい感じの雰囲気なのは嬉しいけど、ここ 日向くんのマンションの前なんだよね…




私は全然構わないけど、日向くんがご近所さんとかに見られて
『最近の高校生は……!』
みたいに思われて変な噂たっちゃったらいやだし。




「ダメ、もーちょいこのまま…」




っ日向くん…!?




目の前の道路、ビュンビュン車通っちゃってるよ……



「わ、わたし、お腹…すいたし」




しばらく返事は返ってこない。



この手でもダメ!?



「は、お前昼飯は?」




急に身体を離されて、
今度はガシリと肩を掴まれる。



お昼は……___



「あはは…、日向くんのこと気になって忘れてた……」



「なんだよそれ……」



「わっ…!」




そしてまた元の体勢へ。




「………………あほ」



また彼はぎゅうぎゅう抱きしめてくる。



不覚にも、可愛いなんて思ってしまったり。



だ、だって、あの日向くんがこんな甘えるなんて超レアだし…



じゃなくて!!!




「ちょ、一旦中入ろう!?……ここ、外 だし…」



「…あー、うん。悪い」



やっと離れた身体。



離れてしまったせいで、またすぐ冷たい空気が肌を刺す。




さりげなく握られたその手に引かれて、部屋まで案内されると、10分もしない内にカップ麺がテーブルに置かれた。




「これしかねえわ、……いい?」




「うん!全然ヘーキ!」




キッチリ3分経ったカップ麺を、二人手を合わせて食べ始める。



あったかくておいしい…



そういえば、カップラーメンなんて最近食べてなかったかも……



眼の前を見ると、勢いよく麺を啜る日向くん。



あんだけ人の事言っておいて、自分も緊張して食べてなかった、なんて。




「ふふ…っ」




「なんだよ」




「いや、幸せな光景だなーって」




「……は?」




「こうやってカップ麺食べてるだけなのに、なんかあったかい」




私がそう言えば日向くんは小さく笑った。




「そうだな」






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