ヒマワリ君の甘い嘘
「きも」
笑った私を見て、日向くんが呟く。
その悪口はなんだか少しだけ心地が良くて、今度はバレないようにクスクス笑った。
***
放課後。
華とバイバイしてから職員室に行き、どうしてもお残りしなきゃダメ?と担任にもう一押ししてみたけれど、結果はダメで、そのままUターンして教室に戻ってきた私。
お残りかぁ…
課題、授業中とかにやってほとんど終わってるのに。
『5時までお残りしてけ〜、それまでには絶対帰るなよな。帰ったら単位やらなーい』
う…………。
今は三時四十五分。
時計を見た私は項垂れた。
「(まだ一時間ちょっともあるじゃん…)」
ため息を吐きながら教室に入ると、生徒が何人か、帰る支度をしている。
「あ、立花さーん!帰ったのかと思ったじゃーん!」
もー、と口を尖らせながら、笑う高崎くん。
私の姿を見つけて手をヒラヒラと振ってきた。
やっぱり、本当に一緒にお残りするつもりなんだ…
それに、日向くんも結局居るし…
「あの、本当に帰ってもいいよ…?課題もほとんど終わってるし…」
「なら帰る」
日向くんがガタンと椅子から立ち上がって、カバンを取る。
「ならお話しよーよー、ハイ、葵生くんストップ」
高崎くんがすかさず、日向くんのカバンを掴み、引き止めた。
お話って…。
「おい…、離せって! 」
「どうせ帰っても暇でしょー?」
「勝手に決めんじゃねーよ」
「はいはい落ち着いてー」
怒る日向くんと、それをニッコリと受け流している高崎くん。
勝ったのは高崎くんみたいで、グイグイと日向くんのカバンを引っ張ると、そのまま椅子に座らせた。
私はそんなふたりに苦笑いしながらも自分の席に座る。
「じゃあさっそく質問タイムー!あ、葵生は聞いてるだけでいいよ〜。立花さん答えてねー!」
え、あの…質問タイム?
なにそれ…
「名前は?」
「た、立花小夏です…、?」
な、なんなのこれ…
「だってさー、葵生」
「なんで俺に言うんだよ!」
へへ、と高崎くんは笑ってまた質問を続けるらしい。