哀しみの瞳
(重子)
「先生!理恵ちゃんは、このまま、目を覚まさないんでしょうか?赤ちゃんの顔みたいでしょうに!」



(小林……
吉川さんっ、君は、頑張った!君の赤ちゃんは、こんなに元気なんだ!さぁ、目を覚まして僕に、あの何とも言えない笑顔で、有難うって、言ってくれ!今までの理恵との、戦いが、巡り巡って思い出される。最初に会った時は、今どきの軽ーい女の子かと思った。ところが、まるっきり違っていた。予想外に芯がしっかりしてて、無理だと思ってた事をどんどん実行してくる。この小さい体のどこにこれだけの力があるというのだ。俺の為に目を覚ましてほしい!今は、もう一度君の元気な姿を見たい…)


小林は、理恵の手をとり、赤ちゃんの頬に当ててやった。理恵の指がピクって動いた。




(理恵)
「私の赤ちゃん?……もしかして…男の子?」



(重子)
「理恵ちゃん!!!あんた…目っ、覚ましたのねぇ―あああっ!……」泣き伏している。


(理恵)
「小林先生?小林先生!私本当にっ、赤ちゃん産んだんですね?……
私ずっと夢見てて…私の子供の。男の子だったんです!小林先生!有難うございました!」
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