哀しみの瞳

秀の自信

秀は、毎朝ジョギングをして、道場で軽く体を動かし、精神を落ち着かせ、一日を始めることにしている。

甚一の元へ身を寄せて以来、一度も両親の元へは、帰っていない。理恵の家へは、おばさん宛だけに、内緒で、こちらの住所を知らせておいた。理恵から連絡があった場合、すぐに知らせて欲しいと手紙に書いておいた。が未だ連絡は来ない。

秀は、あの胸騒ぎを覚えた日から、毎年、子供の年を数えている。もしも、あの時、自分の子供が生まれていたとしたら……とすると、今は5才になっているはず…


元気に生まれたのだろうか?男の子か?女の子か?…

いやっ、それより理恵は無事でいるのだろうか?そんな事ばかり考えて、仕事が手に付かない時が度々ある。そんな時は、いつも、道場へ出向き、甚一の説教を受ける事にしている。


(甚一)
「どうした?……また、いつもの深い闇の中に迷い込んだのか?」



(秀)
「…はい!…どうしようもない、出口の無い暗闇の中です」



(甚一)
「どうだ!今の生活は、お前にとっては、満足のいく生き方になってないか?」



(秀)
「いいえっ、自分は、先生や美佐子さんや美紀さん達、すべての方達に助けてもらい、どれ程愛情を掛けて頂き、今の自分があるという事を、よく分かっています。………ただ」


(甚一)
「ただ…?愛する人と、その子が側にいてくれたら。か?」



(秀)
「………」
俯いたまま、答える事が出来ない。
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