哀しみの瞳

気付く想い

由理は、秀一が居た時は、あれ程反抗的だったにも関わらず、今では、真面目な、ごくごく普通の女子中学生として、頑張っていた。



何か余程秀一と約束事でもしたのだろうか。



勉強も、誰に言われなくてもやり、日常の生活も、乱れることなく、美佐子さんや美紀さんの言う事も、ちゃんと聞き、秀を驚かせていた。



(秀)
「由理?今年の誕生日、何か欲しい物あるぅ?何でも言ってごらん!」



(由理)
「………しゅうの所へ…行きたい。由理、その為に、内緒で今まで貯金してた。」



(秀)
「ええっ、何だって?秀一の所って……由理一人で?」



(由理)
「一人でに決まってるよ!……しゅうと約束したもの。」



(秀)
「ええっ!何て?」



(由理)
「由理がね!ちゃんと勉強頑張って、おばさんや、美紀さん達の言う事聞いて、真面目に生活して、しゅうに自分の事、自信持って話せる時が来たら…会えるからって…」


由理は、涙ぐんでいた。それ程までして、秀一に会いに行きたかったのか?



なるほど秀一は、由理と離れること、距離を置くことで、由理の想いを試したのか?



自分を恋しく想うことで、また会えるのを約束して、生活を正そうとした、ということか?



それで、由理は、2年生になっても、遊び歩くことなど一度もせずに、至って真面目に生活をしている。



最近では、空手を習うと言って、甚一さんに、直接指導を仰いでいる。


朝も早く起きて、ジョギングまでしている。



どうやら、部活もバスケットボール部に所属しており、運動神経が抜群に良い為、体育教師になりたいらしいということが分かった。
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