哀しみの瞳
6ヶ月がすぎた、ある日、いつもと同じように、部室へ行くと、部長が、一人で座っていた。 「貴女に、ちょっと聞いてみたい事があるの」 「はい」 「突然だけど、貴女は…いのちについて、どう思う?」 「ええっ、いのち、ですか?」 (15才ね理恵には、いきなりいのちって聞かれても、答えに、詰まってしまった。 (矢部、自分に言って聞かせるように) 「いのちって、私が思うのは、ただ空気を吸って、食べて、眠って、出す、だけじゃなくて、こうっ、体の奥底からエネルギーを燃やして、何かを奮い立たせて、突き上げる力を表に出す物だと思うのね!うまく言えないけど」 まだ理恵には、よく理解できずにいた。部長が、身振り手振りで、必至に続ける。 「歌をうたうってのは、まさに、それなのよねぇ。お腹の底から、その煮えたぎるエネルギーを、出し尽くす、ある時は強く、ある時は優しく……」続けて 言い切る。 「貴方には、何故か、まるでそれが無い!何か、よほど、心の奥底に、しまいこんで、押さえているように私には見えるのだけど…うーんっ どうかしら?」 「私には……?」~なんだろう? 私の心の奥底にしまっているものって…子供の頃からの私?悲しい時の私?つらい時の私?嬉しい時の私? 誰にも言えないつらい私? 秀っ、秀っ、私…秀に会いたい!今すぐ会いたい! どうしてなのかな? いつの間にか、涙が溢れて止まらない。 「吉川さん!どうしたの?私が泣かせた?えええっ!~えっーと、実は今日は休部になったから、貴方に連絡するつもりが、こんな話しちゃって、じゃぁまた今度、みんなとも話そうか?」
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