好きで悪いか!


 そして本日も五時間の「社会勉強」が終了。
 夏休みが始まる前から、週末だけ入っていたバイト先だから、仕事に慣れていないというわけじゃないけれど。

 さすが夏休み。客足が一気に増えて忙しいし、期間限定の新入りバイトさんたちとの人間関係に、まだ慣れなくて疲れる。


「お先、失礼しまーす」

「お疲れ様でした~」

 閉店時間になり、店締めの仕事が残っている店長たちに挨拶して、店を後にする。

 最寄のバス停までは、大抵誰かと一緒だし、賑やかな通りで人通りも多い。
 降りるバス停には、いつも母が迎えに来てくれている。
 近くにコンビニがあるため、夜になると田舎のヤンキーがたむろっているのだ。夏の風物詩だ。

 バイトの子と別れ、ガラ空きのバス停のベンチに座ろうとして、目にとまった。
 ベンチの上にある、荷物。藤色の無地の風呂敷に包まれた、いかにも「荷物です」という感じの。
 
 辺りを見回すも、持ち主と思しき人物はいない。

 この時間帯に、田舎へ向かうバスの本数は少なくて、四十分に一本。バイトを上がる時間と噛み合わなくて、いつも早くから長い時間待つ羽目になる。
 というわけで、バス待ちしているのは今のところ私一人。他に誰もいない。

 ってことは、

「完全に忘れモンじゃん……」
 
 しかも、見るからに大層そうな。ピシリと、たるみなく包んである。風呂敷も高級そうだし。
 四角いシルエット。箱が包まれているようだ。

 箱の中身は、何でしょね?




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