好きで悪いか!
 ズシリと重い「遺留品」を抱え、近くの交番へ向かった。
 推定、高価な品だけに、ドキドキしてしまう。大金を持ち歩いている感覚だ。

 万一交番に着く前に持ち主とバッタリしても、先に警察に電話しているから、泥棒と間違えられたりはしないよね?
 ドキドキしながら、交番へ到着。

 先客ありで待たされ、さらに手続き上の書類とやらを書くのに時間を取られ、帰りのバスに一本乗り遅れた。
 母に電話すると、もっと早く言え、もう家出たしと怒られる始末。

 いいことしたのに、怒られるって理不尽だ。
 だけど、きっといいことが待っているということに気付いて、ウシシと思った。

 だって、あのぶんぶく茶釜。拾って届けたってことはさ、御礼に一割貰えるってことじゃない?
 金メッキだったらガッカリだけど、純金なら何十万も何百万もするかもしれない、あのティーセット。

 そんな高価なものを、バス停に置き忘れるなんて、持ち主は相当天然なうっかりさんに違いない。




 翌朝、遅めの朝食を母親と食べていたら、家の電話が鳴った。
 母が出て、私に代わる。

 昨日の交番からだった。
 あのぶんぶく茶釜は、あれからすぐに持ち主が見つかり、無事手元に戻っていったらしい。

「それで、その方が、是非古賀さんに御礼をしたいと仰ってましてね」


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