好きで悪いか!
 キター、きたきた! 期待通りの展開!

「友永さんという方なんですけどね」

――え?

 友永と聞いて、真っ先に思い浮かぶのは当然、友永先輩だ。
 そんな、うそっ、まさか……
 でも地元で友永という姓は珍しいし、有名だ。

「友永さんって、もしかして友永不動産の人ですか?」

「ええ、まあ。その辺は、直接連絡取り合ってほしいんでね。友永さんの携帯番号、お伝えするんで、一度お電話してもらえますか? あ、じゃあお母さんに代わってもらえますか?」

 呆然としたまま、母親に電話を代わる。

「いえいえ、そんな御礼だなんて……」と恐縮しつつも、「ああ、そうですか」とさらさらとペンを走らせている様子からして、どうやら来るらしい。

 聞き耳を立てていると、

「今日の二時ですね、ハイ……みやび、いるわよね?」

 と今日の予定を確認された。バイトまでは、バッチリ暇だ。


「お母さん! その友永さんって多分、うちの高校の生徒会長の、家族か親戚」

 電話を切った母に、興奮して言った。

「生徒会長ぉ?」

「友永不動産の、社長の息子。超イケメン。頭も良くて、学年トップ」

 そんな完全無欠な友永先輩の身内が、あのぶんぶく茶釜の落とし主だったとは。
 華麗な一族の中にも、間の抜けた人っているもんだなあ。


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