好きで悪いか!
…………本人でした。
「友永です。この度は、拾い物を届けていただき、本当にありがとうございました」
午後二時五分。
正しい訪問マナーに沿ったかのように、かっきり五分遅れでやって来た先輩は、玄関先で最敬礼をした。
素晴らしく畏まった挨拶に、母があんぐりする。
初めて見る私服姿にドキっとする。さすが先輩は私服も上品、かつオシャレだ。
濃紺のトラディショナルなボタンダウンシャツに、今夏の流行色であるレモンイエローのクロップドパンツ、アンクル丈。かっちりとしたデザインの靴。
シンプルなコーディネートに、洗練されたハイセンス感。
多分、どのアイテムも高価なブランド物なんだろうと思われし。
ああ、いい男すぎて、ヨダレ出る。
「いえいえ、こちらこそ。わざわざお出でいただいて、すみませんね。あの、友永さんは、旺英高校の生徒会長さんでいらっしゃる……のよね?」
突然くるりと振り返り、私に確認する母。慌てて頭を下げた。
「友永先輩、こんにちは。お世話になってます」
母から私に視線を移した先輩の瞳に、さっと驚きの色が浮かんだのが、見て取れた。
だけどそれはほんの一瞬。
取り繕うようにして、生徒会長然とした笑顔を浮かべる。
「こちらこそ……古賀みやびさん、どうもありがとう」