好きで悪いか!
 おう、いぇい! 先輩に名前呼んでもらっちった!!
 これはもう、先輩に名前覚えてもらえたフラグ、立ったんじゃないの?

 うちに訪ねて来るまで、警察から聞いた私の名前にピンと来てなかったってことはさ、告白したのに覚えてもらえてなかったってことだもんね。
「炎天下の中、うざかった女」としか、覚えてなかったに違いない。

 それが何と!
 あの金の茶釜を拾ったおかげで、

“古賀みやびさん、どうもありがとう”

 名前呼んでもらえて、笑顔で話しかけてくれて。チョー超ラッキーだ。
 先輩の笑顔を声を、何度も脳内リフレインしては、くらっくらした。

 そして、夢のような約束。
 時価七十万はするという純金のティーセットを警察に届けた御礼として、

「両親から預かってまいりました……現物で失礼だとは存じますが、どうぞお納めください」

 すっと客間のテーブルの上に差し出された白封筒に、母は手をつけずにじっと眺めた。

 七十万の一割だと、七万円。けど、封筒はそんなに薄っぺらくない。

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