好きで悪いか!
「いただけません、どうぞ仕舞ってください。拾い物を交番に届けるのは、当たり前のことですもの。それがたまたま高価なお品だったというだけのこと。お気持ちだけで、結構です」

 母の言葉にあんぐりする。母ちゃん、かっこいー。

 けど、その「当たり前のこと」をしたのは、私なんだけど。
 さも自分の手柄みたいに言っちゃってさ。迎えの時間が遅くなって、キレてたくせに。

「そう仰られるかとは思ったんですが……。そこはどうか、僕の顔を立ててはいただけないでしょうか。受け取っていただけなかったと言って、うちにおめおめと持ち帰るわけにはいけません。叱られます。あのティーセットは、品物としての価値はたいしてありませんが、実家代々受け継いで来た、縁起物なんです。もしあのまま失くしてしまっていたらと思うと……。どうか、僕に御礼をさせてください」

 凜として食い下がる先輩を、母はまじまじと見た。

 こうまで言われると、受け取っちゃうのか? どうする、ママン!

 完全に蚊帳の外にいる私は、無駄に緊張しながら、二人のやり取りを胸のうちで実況中継しながら、眺めている。

「大事な家宝なんですね。良かったわ、お手元に戻って」

 おおっと、さりげに恩着せがましいぞ!
 これは御礼を受け取る前フリなのでしょうか。

 てか、数年前の我が家の経済状況だったら、こんなやり取りをする余裕もなく、さっさと頂戴してたんだろうなあ。
 成金になって良かった。がめつい貧乏人だと、先輩に思われなくて済む。
 時価七十万の純金を、「品物としての価値はたいしてない」なんて言っちゃう先輩だもんな。


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