涙ドロップス 〜切なさを波に乗せて〜
私を抱えて、夕凪はゆったり岸に向けて泳ぎ出す。
夕凪の濡れた髪が、朝日を浴びて光っている。
茶色の瞳は、生き生きとした輝きを取り戻し、
口元は嬉しそうに綻んでいた。
海を感じ、波を楽しんでいるのが、伝わってきた。
私は満足して、夕凪に身を任せていた。
無事に岸まで帰り着き、波打際の砂の上に並んで寝転んだ。
打ち寄せる波が、二人の足元を洗う。
ガムテープをはがして自由になった手で、夕凪と手を繋いだ。
青空に流れる雲を見つめ、夕凪が呟いた。
「すげぇ、気持ちいい……」
「うん」
「義足サーフィン……やってみようかな……」
「うん!」
夕凪と顔を見合わせ、笑った。
心につっかえていた物が外れて、
二人ともスッキリした顔で笑っていた。
今日は義足サーファー人生の、
第一歩。
ここからが本当の試練の始まりかも知れない。
今までのようなサーフィンができず、わめきたくなる時もあるだろう。
それでも夕凪は、きっと諦めずに波に挑み続ける。
私はそんな夕凪を、一番側で支えていきたい。
――――……