涙ドロップス 〜切なさを波に乗せて〜
命を軽く考えているつもりはない。
命をかけているつもりもない。
夕凪が必ず飛び込んでくれると、信じているから……
すぐ近くに、大きな水音を聞いた。
沈みゆく私に向けて、夕凪が真っすぐに泳いできた。
義足でも、ちゃんと水を蹴っている。
鍛え上げたその体は、波に押されてもブレたりしない。
夕凪の腕が私を捕まえ、引き寄せられた。
私を抱えて、一気に浮上する。
二人で海面に顔を出すと、夕凪に怒られた。
「バカヤロウ!
何て真似してんだ!!」
「だって、こうでもしないと海に入らないでしょ?
久しぶりの波はどう?気持ちいいよね?」
笑いながらそう聞いた。
夕凪はムスッとした顔しながらも、質問には素直に頷いてくれた。