涙ドロップス 〜切なさを波に乗せて〜
ゴツゴツした岩場には、大勢の見物客がいる。
双眼鏡を手に熱心に沖を見ている人もいれば、
お祭り気分の若者もいる。
試合前から私は、祈る思いで夕凪を見つめていた。
義足のサーファー人生を歩み出して2年になる。
一言では言えないくらいに大変な道のりだったけど、
諦めずに努力し続けた夕凪は、
プロトライアルに挑戦するだけの力を身につけていた。
2日前から予選が始まり、5回戦まで無事に勝ち上がってきた。
今日は大会最終日。
3人で争う決勝戦だ。
好成績で優勝できれば、同時にプロ資格も得られる。
義足のサーファーということで、
夕凪は大会初日から注目されていた。
予選を勝ち抜くにつれ、ますます注目度が増し、
決勝の今日は、例年にないほどのマスコミ関係者が浜辺に押し寄せていた。