涙ドロップス 〜切なさを波に乗せて〜
日本初の義足のプロサーファー誕生を、皆が待ち望んでいた。
余計なプレッシャーが掛かると私は気になったけど、
夕凪は平然としていた。
「楽しんでくるから」
試合前はいつもそう言って、笑顔で沖に出て行った。
いよいよ試合が始まった。
総勢150人の選手から勝ち上がった3人が、決勝を戦う。
選手は色分けされたゼッケンを着ている。
夕凪はサーフパンツの上にブルーのゼッケン。
他の2人は、赤と白のゼッケンだ。
3人が沖に出ると、合図のホーンが鳴り響いた。
試合時間は15分。
その間に、いかにいい波を捕らえられるかも、勝負の内。
夕凪を含めて3人とも、しばらくは波間に浮かんで動かない。
じっと良い波が来るのを待っていた。