涙ドロップス 〜切なさを波に乗せて〜
 


日本初の義足のプロサーファー誕生を、皆が待ち望んでいた。



余計なプレッシャーが掛かると私は気になったけど、

夕凪は平然としていた。



「楽しんでくるから」

試合前はいつもそう言って、笑顔で沖に出て行った。




いよいよ試合が始まった。


総勢150人の選手から勝ち上がった3人が、決勝を戦う。



選手は色分けされたゼッケンを着ている。


夕凪はサーフパンツの上にブルーのゼッケン。


他の2人は、赤と白のゼッケンだ。



3人が沖に出ると、合図のホーンが鳴り響いた。



試合時間は15分。


その間に、いかにいい波を捕らえられるかも、勝負の内。



夕凪を含めて3人とも、しばらくは波間に浮かんで動かない。


じっと良い波が来るのを待っていた。



< 369 / 378 >

この作品をシェア

pagetop