涙ドロップス 〜切なさを波に乗せて〜
開始2分、初めに動いたのは赤いゼッケンの選手。
岩場に設置されたスピーカーから、大音量の解説が流れた。
『さあ、男子ショートボード決勝戦、まずはレッドが動き出したー!
パドリングからアップする〜
ファーストターン、おっとハプニング!
乗り切れず落ちてしまったー!』
赤いゼッケンの選手は、波を待ち切れずに先走ってしまったみたい。
勢いのない波を選んでしまい、
ボードが走らずに落ちてしまった。
これではポイントが付かないだろう。
赤の選手が急いで沖に戻って行き、今度は白いゼッケンの選手が動き出した。
白の選手は、既にプロ資格を持っているベテラン選手で、この大会の一番の優勝候補。
実力も経験も、アマチュアの夕凪より数段上だと見られていた。
前評判通り、白の選手はいいライディングを見せた。
波が少し小さかったけど、一回目の波乗りとしては上々の滑り出し。
解説の人がそんな風に褒めていた。