[中]余命24時間
しかも顔までいい翔は、3人の教育実習の中でもダントツにモテていた。
一方のあたしと言えば、年上になんて興味がなくて。
付き合うなら絶対同級生だって、ずっとそう思ってた。
だけど、あの日。翔が、本当のあたしを見つけてくれたの。
『里村ってさ、いつも何か背負ってるような顔してるよな。
友達といるときも、本気で笑ってない気がする』
友達にも、家族にも気づいてもらえなかった、本当の"あたし"。
それを、出逢ってわずか数日で見つけ出してしまった翔が、なんだかすごく眩しく見えた。
その頃のあたしは、家族関係に悩んでいた。
日に日に帰りが遅くなるお父さん。
それに比例するかのように、お母さんが怒鳴る回数も増えていった。
怖かった。
家にいることが。
お父さんと、お母さんと時間を過ごすことが。
そのうち自然に、友達の前でもちゃんと笑えなくなってた。
1人っ子でぬくぬく育ってきたあたしへの罰なんじゃないかと思ったことも、あった。