[中]余命24時間
いつも以上にうるさい心臓をなだめるように、パジャマ代わりにしていたTシャツを脱ごうとした時だった。
バタバタバタ、と、誰かがスリッパで階段を駆け上がってくる音が、部屋中に響いたのは。
あたしを追っていた翔の目は、階段に向けられる。
それにつられるかのように、あたしの目も。
やがてあたしたちの耳に聞こえたのは、
「美音…!今テレビで…!!」
血相を抱えながら張り上げる、お母さんの叫びだった。
普段は温厚なお母さんが、顔を真っ赤にしながらあたしに向かってくる。
昨日の病院での顔とは、まったく別物だ。
昨日は現実さえも受け入れようとはせずに、ただ無表情で車のハンドルを握っていたお母さん。
だけど今は顔を真っ青にしながら、必死にあたしに訴えている。
「お母さん?どうしたの?」
服を脱がなくて良かった。そう考えたのも、つかの間だった。
「美音…早く…テレビを…」
途切れ途切れになりながら話すお母さんの声は、もうはっきりとは聞こえない。