虫の本
「リピテル、私が居ない間に大樹に何したの? すっごい怒ってるっぽいんだけど……」
「我はお前達二人を“再生”させると約束しただけだ。確かに奴の魂を消費すると嘘は吐いたし、詳細まで説明する暇は与えなかったかもしれぬが、聞く耳を持たなかった奴にも非があろう」
「うっわ、性格悪う〜! 切羽詰まった状況で相手に考える暇を与えないとか、それって詐欺師の手口じゃない」
「天使だからこそ、相手に信じさせられる事もある」
「根っこから腐ってるんだねえ……」
「根は根でも、我が持つのは“羽根”だがね」
楽しそうにけらけらと笑う由加と、苦笑いを浮かべる糞天使。
由加の言葉に応え、奴はその白くて大きな翼をばさりと翻した。
何だこれ。
「何なんだ、これはっ!! お前は本当に由加なのか!?」
「あったり前じゃん? 大樹、ちょっと混乱してるね……大丈夫?」
大丈夫なものか。
訳が分からねーよ。
そう言い返したかったのに、息が詰まって言葉にならなかった。
だというのに、恨み言と泣き言ばかりが漏れ出てくる。
「何でまだ生きてんだ!! 何でそんな奴と親しげなんだ!! お前は誰なんだあああああっ!!」
「ちょっと、しっかりしてよ。 心配しなくても、私の一番は大樹だってば。浮気なんかしないって」
「そんな事を言ってるんじゃねえ! 由加は死んだはずだろ!? こんな簡単に人が生き返ってたまるか!! 何もかも滅茶苦茶だっ!!」
「それが天使の“再生”なんじゃない?」
ふふふと笑って、由加がちらりと天使の方を見る。
違う、あれは嘘のサインだ。
彼女が嘘を吐く時の癖だ。
由加本人すら気付いていない、無意識の内の癖。
あれが本当に本物の由加、あるいは極限まで彼女を模したナニカであると仮定するなら、この由加の復活は“再生”なんかじゃ、決して、ない。
俺だけが知っているサインを目にし、理性が少しだけ戻りかける。
が、混乱の波がそれを押し流すのには大して時間がかからなかった。
俺は再び感情のままに叫び出す。
目の前の理不尽を糾弾し続ける。
「我はお前達二人を“再生”させると約束しただけだ。確かに奴の魂を消費すると嘘は吐いたし、詳細まで説明する暇は与えなかったかもしれぬが、聞く耳を持たなかった奴にも非があろう」
「うっわ、性格悪う〜! 切羽詰まった状況で相手に考える暇を与えないとか、それって詐欺師の手口じゃない」
「天使だからこそ、相手に信じさせられる事もある」
「根っこから腐ってるんだねえ……」
「根は根でも、我が持つのは“羽根”だがね」
楽しそうにけらけらと笑う由加と、苦笑いを浮かべる糞天使。
由加の言葉に応え、奴はその白くて大きな翼をばさりと翻した。
何だこれ。
「何なんだ、これはっ!! お前は本当に由加なのか!?」
「あったり前じゃん? 大樹、ちょっと混乱してるね……大丈夫?」
大丈夫なものか。
訳が分からねーよ。
そう言い返したかったのに、息が詰まって言葉にならなかった。
だというのに、恨み言と泣き言ばかりが漏れ出てくる。
「何でまだ生きてんだ!! 何でそんな奴と親しげなんだ!! お前は誰なんだあああああっ!!」
「ちょっと、しっかりしてよ。 心配しなくても、私の一番は大樹だってば。浮気なんかしないって」
「そんな事を言ってるんじゃねえ! 由加は死んだはずだろ!? こんな簡単に人が生き返ってたまるか!! 何もかも滅茶苦茶だっ!!」
「それが天使の“再生”なんじゃない?」
ふふふと笑って、由加がちらりと天使の方を見る。
違う、あれは嘘のサインだ。
彼女が嘘を吐く時の癖だ。
由加本人すら気付いていない、無意識の内の癖。
あれが本当に本物の由加、あるいは極限まで彼女を模したナニカであると仮定するなら、この由加の復活は“再生”なんかじゃ、決して、ない。
俺だけが知っているサインを目にし、理性が少しだけ戻りかける。
が、混乱の波がそれを押し流すのには大して時間がかからなかった。
俺は再び感情のままに叫び出す。
目の前の理不尽を糾弾し続ける。