【短】俺とあの人~狼の恋~
会いたい
明日から高校生活最後の冬休みが始まる。


就職活動を終えた俺にとっては、気ままに過ごせる冬休み。



あの人に会う確率がほぼ0%になるってことだけが、心の中で重たかった。




終業式を終えて校舎を出て行く生徒達の後ろ姿が図書室の窓から見えた。



「俺も帰ろ…」

机に置いていた鞄を持ち、図書室から出た…



出た瞬間、俺の心臓が激しく波打った。




隣の資料室のドアが閉まる一瞬、あの人の手が見えた。



ドアノブを握るあの人の小さな手…。





俺は何も考えず資料室のドアを開けた。



俺の目の前に、窓のない暗い資料室で電気を付けようとしているあの人の背中がある。



振り返ったあの人は、俺を見て驚いた。


「高橋君‥」



俺はドアを閉めて、真っ暗な資料室であの人を抱き締めた。









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