涙があふれるその前に、君と空をゆびさして。


「美紀さん大丈夫…?」


「ごめんね、咲夜ちゃん。ちょっと荷物ば落としただけやから大丈夫ばい」



ダンボールをゆびさしながら美紀さんが笑った。


危ないなぁ……



「気をつけんといかんよ?お腹に障るけん、これからは重いもの取る時は私に声かけてよ……」


「ありがとう。頼りにしとるよ」



叔父さんが心配そうな視線を美紀さんに送る。


……子どもを生むってどんな感じなんやろ。


自分の中に、別の命があるなんて。


私もお母さんのお腹の中にいて、生まれてきたんよね。


そして私もいつか母親になると?


……想像できなすぎて、笑える。


人を殺そうとした私に母親になる権利なんてあるんやろうか?


私のところに生まれて来た子は……きっと可哀想。


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