涙があふれるその前に、君と空をゆびさして。



「行ってらっしゃい。あんま遅くならんとよ?」


「うん!行ってきます」



履き慣れない下駄が硬くて変な感じがする。


美紀さんに見送られてから待ち合わせ場所の丘に向かった。


……小さい頃はレイと私だけが知る秘密基地だったのになぁ。


レイが圭都にも、真理ちゃんにも教えてしまったらしい。


いいんだけど……。


でも、あの丘は私にとってレイとの大切な思い出の場所やから。


ちょっと残念な気もする。



「……って、だめやなぁ」



圭都のこと見ようと思ってんのに、レイのことばっか。


ほっぺをつねると入道雲が綺麗な夏空をゆびさして、にーっと笑って見せた。


……頑張るって決めたっちゃん。


美紀さんと叔父さんの愛に触れて、すこしだけ心が元気になったから。


圭都が私のこと好きやって言ってくれたけん。


ちょっとずつ……ね?


頑張るって決めたっちゃん。


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