涙があふれるその前に、君と空をゆびさして。



「…………」



うーんと腕を組んで悩んだあとに、適当に薄いブルーの袖の短いブラウスと紺色のズボンを選んだ。


……あんまり張り切っていると思われたくないけれど、ダサいとも思われたくないので、無難にこれかな。


髪の毛をブルーのシュシュでまとめて、
白のバックにサイフとスマホとハンカチを詰めて家を出た。


はぁ……マジで憂鬱なんですけど。


行きたくないせいか、足取りが悪い。田舎だから風景があまり変わらないっていうのもあるけれど、さっきから前に足が進んでない気がする。


そしてやっとの思いで丘に繋がる階段にたどり着き、上がって行くとベンチに座るレイの姿があった。



ーードキンッ……。



思わず立ち止まる。風が後ろから吹きつける。



「レイ……」



空をゆびさして微笑むレイに胸がキュンと反応した。


さきほど私の髪を揺らした風が、レイの色素の薄い髪の毛をも揺らす。


……今でもやってるんや。私にくれた、魔法。君の、おまじない。


ゆっくりと近づいているとショルダーバックの紐を握る自分の手に力が入ったのがわかった。


ふと私に気づいたレイがこちらを見て目を見開く。



「……サク」



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