裏切り
「お願い。助けて。何でもするわ。私の事は殺しても良い。でも、せめて子供達だけは、うっ…!」
どさっと音がして息のない人間を前に男は不気味に笑う。そして、そのまま男は凶器を持ったまま部屋を出ていった。
「美しい音色だ。君が弾き終わるまで待ってあげよう」
男は由利亜達の部屋の外で背中を壁に寄りかけて演奏を聞いていた。
もう少しで曲のさびだわ。不意にごとんっ!と大きな音がする。由利亜はとっさにピアノの演奏を止めた。
鈴音もびくっと肩をふるわせ外に目をやる。そう思ったのと同時に真っ黒の服を着た見ず知らずの男が部屋に物凄い勢いで入ってくる。それも、何人も。由利亜達は逃げる間もなく男達に襲われた。
「きゃー!!助けて!」
「お姉さま!」二人は抵抗したが男達は容赦しない。由利亜はこれまでに味わった事のないとてつもない恐怖感におそわれた。そして、
跡形もなく由利亜達はめった刺しにされた。真っ白だったピアノは真っ赤な血で染まってしまっていた。結局由利亜は最後までピアノを弾き終える事ができずに死んでしまった。
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