裏切り
「由利亜お嬢様ー!」館内に響く声。書籍がたくさん並ぶ部屋の中で一人の少女が不意にぴくっと反応する。「ふぅ…」見ていた本をぱたっと閉じて声のする方に向けて「はーい!今行きます!」と声をかける。がちゃりとドアを開ければ真上には大きなシャンデリア。館内には滑らかな音楽がかかっている。お手伝いのばあばが下で待っている。「お嬢様。ご主人様がお待ちですよ。」大広間にはたくさんの机と椅子。高級な家具が並ぶ。「由利亜」優しい声が部屋の中で響く。「何?パパ。」「今回のコンクールはどうだ??練習は順調か?」「えぇ、大分上達してきたと思うわ。あとは本番次第って感じかな?」「そうか。期待してるぞ。」穏やかな顔をした父を前に、由利亜の表情もなごむ。「本当に仲がよろしいですね。このご一家は。私も見ていて本当に気持ちが和みます」「やだ、ばぁばったら」館内には三人の笑い声が響いていた。
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