晴れ、時々、運命のいたずら



(千曲川…。)



穏やかに川の水は流れ続ける。


愛姫は座りやすい場所を選び、鞄を横に置いて座り、川を眺めた。



(この短期間に色々な事があり過ぎたな…。)



Shipの解散、島根の退職、兄隼太との再会…。


めまぐるしく変わる毎日の中で自分は何をしてきたのだろう。


これから先、何をしていきたいのだろう。


誰も答えを教えてくれない。


答えを探すのも導くのも見つけるのも自分自身だけ。



(私の答えは…、私の最終地点は…。)



幸せの黄色いお守り。


そのお守りを片時も離さず持っている。



(このお守りは翔太自身。そして、私の全ての思い…。)



いつの間にか愛姫の周りには人がいなくなっていた。


暗くなる前に走り回っていた小学生達が帰って行ったようだ。


ふと右手を見ると、遠くから河川敷に降りてくる人影が見える。


まだ小さな人影だが、どことなく寂しさを感じる。


川のほとりまで歩いてくると、ゆっくりと座り、愛姫と同じように川を眺めているようだ。


愛姫は鞄を肩にかけ、ゆっくりと立ち上がると、その座った人影に近づいて行った。


写真を見なくても気が付いた。


その人影の正体を。



(穂乃花ちゃん…。)


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