不器用なシンデレラ
 母も詩音もドイツで働いてはいないようだし、父の保険金を使い果たして仕方なく日本に戻って来たんだろう。

 コンクールもいい成績を残せなかったようだし、鬱憤が溜まっているのか私への態度はいつも以上に酷かった。

「・・・うじ虫かあ」

 詩音の言葉が刃物のように私の心に突き刺さる。

 要領が悪くて、人前でおどおどしている私は確かにうじ虫だ。

 自分でもそんな自分が嫌いだ。

 言いたいことも言えず、ずっと流されてきた。

 そんな私は理人くんには釣り合わない。

 それは一番自分がよくわかってる。

 詩音は自分に自信があるし、やることもテキパキしている。

 彼女の方が理人くんにはお似合いかもしれない。

 私みたいにぐずぐずして理人くんを苛立たせる事はないだろう。

 ポケットからスマホを取り出すと、詩音から早速メールが来ていた。
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