不器用なシンデレラ
「お店の人に水もらってくる。ここで待ってて」

「・・・・」 

 もう動きたくても動けない。

 理人くんはスーツのジャケットを丸めると、廊下に置いてあったゴミ箱に捨てた。

 そうだよね。

 あんなに汚れたら捨てるのが当然だ。

 こんな自分がますます嫌になる。

 どうしてお酒飲めないって断れなかったんだろう。

 ちゃんと断っていれば理人くんに迷惑をかけることもなかった。

 今夜のこの出来事なんてなかった事に出来ればいいのに。

 もう記憶を消したい。

 自分がこの場から消えてしまいたい。

 ギュッと目をつぶると理人くんに抱き抱えられた。

「まだ気持ち悪いのか?水飲んで」

 理人くんが私の口にグラスを運ぶ。

 水が冷たくて、口の中が少しすっきりした。
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