不器用なシンデレラ
 でも、言葉は素っ気ないけど彼のキスは温かくて優しくて・・・・何だか泣けてきた。

 頬に流れた涙を理人くんがすくい上げるように舐める。

「・・・しょっぱい」

 理人くんの正直な感想にちょっとムッとなった。

「・・・何でそんなの舐めるの?」

「本当にしょっぱいのか興味があった」

 驚きで声も出ない私を面白そうに眺めながら、理人くんは淡々と答える。

「・・・じゃあ、自分の舐めればいいじゃない?」
 
「俺はお前みたいに泣き虫じゃないから。それに、好きな女が目の前で泣いたら慰めたいって思うだろう?」

 理人くんは無表情でとんでもない事を平然と口にする。

 だから、聞き返さずにはいられなかった。

「好きな女って私?」

「好きでもない女にキスする趣味はない」

「でも・・私はいつも迷惑かけてて・・・」

「五月蠅いよ。黙らないなら黙らせる」

 そう言って、理人くんはまた私の口を塞いで黙らせる。

 理人くんが私を好き?

 信じられない。
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